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どうやらウマ娘で二次創作のガイドライン変更が行われたようです。
これについて、まずもって二次創作・同人というものの本質的な性質について考えて見るべきだろうと思います。
結論から言えば、二次創作というのは全てオリジナル作品です。
ウマ娘の二次創作ガイドライン変更
https://umamusume.jp/derivativework_guidelines/
このようにガイドラインを変更したようです。
自分は変更前がどういったガイドラインだったのかを把握できていないのですが、どうやら何かしらが強化されたのか、あるいは初めて箇条書きで具体的に提示されたのでしょう。
そもそも二次創作とは?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E5%89%B5%E4%BD%9C%E7%89%A9
二次創作物(にじそうさくぶつ)とは、原典となる創作物を利用して二次的に創作された、独自の漫画、小説、フィギュアやポスター、カードなどの派生作品を指す。
「二次創作物」に広く受け入れられかつ厳密な定義は存在しない。
~中略~
すなわち、一次作品(原作)が存在しそれを独創的に発展させたものでかつ原作者による監修を受けていないもの、が大まかに二次創作物と呼ばれている。原作者による監修を受ける公式アニメ化作品等はメディアミックスと呼ばれる。また多少の改変はおこなってもほぼ原作そのものであるものはデッドコピー・海賊版と呼ばれる。
~中略~
著作権者の許諾を得ていない場合を仮定して、二次創作物を作成した場合、次の著作権侵害となる可能性がある。
複製権(21条。著作物を複製する権利)
翻案権(27条。二次的著作物を作成する権利。二次利用権・改作利用権とも)
同一性保持権(20条。著作物の改変を禁止する権利。この場合は著作者人格権の侵害)
二次創作という用語の定義は非常に曖昧です。
さらに言えば、著作権法的な適用としても、非常に微妙な扱いとなっています。
何故かと言えば、二次創作とされるものの多くは、本質的に純然たるオリジナル作品だからです。
ウマ娘を例に挙げるとすれば、特定のウマ娘を絵師が一から描いた場合、その絵はその絵師のオリジナル作品と本来は言うべきです。
これが例えばアニメの版権イラストを自前で印刷しただけであれば、それはオリジナル作品とは言えないでしょうが、元になる作品・キャラクターの有無に関わらず、自ら描いた絵であるなら、それは当然オリジナル作品と言えるでしょう。
もちろんこれすら実は曖昧な定義なんですけどね(そのプリンターその印刷紙で印刷した固有の絵と見る事もできなくはないので)。
なぜこのような事になってしまうかと言えば、結局のところは著作権という概念自体に無理があるからなんです。
本来は所有という概念自体がなかったもの(著作)に所有権を付けようとするのが著作権というものですが、所有という概念がなかったのは所有という概念で理解する事が困難だからで、言ってみれば無理を押し通しているような法律なので著作権法の対象というものも極めて曖昧なのです。
本来、世に出た著作というものは社会の共有財なので、そこに対して権利を主張するというのはおかしな話なんです。
現状、著作権法といったような悪法がある事自体が社会的には不幸極まりない事ではあるのですが、あらゆる意味でコピーが容易になった状況を鑑みても、作り手に対して何らかの保護が必要であるのは確かなので、著作権法は悪法だと思うが、かといって他の対策なしに今すぐ無くなるのも困る・・・といったジレンマがあります。
二次創作のガイドラインという発想が見当外れ
二次創作というものは、本来であれば「これは二次創作である」と二次創作者が定義している場合においてのみ成立しうる概念です。
今回のウマ娘で言えば、「これはウマ娘の二次創作です」と作り手が表明しなければ、それは本質的にはその作者のオリジナル作品です。
ですから、個人的にはそもそも「二次創作のガイドライン」といったものを定義すること自体が、少々ピントのズレた発想であると感じます。
ウマ娘の場合は、実在の競走馬の名前を使っている関係上、馬主側との兼ね合いもあるので、そういった意味ではガイドライン的なものを出したくなる心情、事情も分かります。
しかし「上記に当てはまる場合、やむを得ず法的措置を検討する場合もございます。」といった文言については、自分からすると許容範囲の外に出てしまったなと感じます。
二次創作というのは、創作者がそれを二次創作であると定義する事で成立する概念です。
一次創作としてもらえるのは、二次創作者がその作品を一次創作であると定義してくれるからです。
故に一次創作側が二次創作側に対して法的措置をチラつかせるというのは、自分からすると看過できない態度ですね。
もし馬主側が苦情を言っているのだとしたら、個人的には「あなた達は日本語の著作権でも持っているつもりですか?」と問いたいところです。
カタカナ・ひらがな・漢字もあるのかも知れませんが、その組み合わせで作られた「馬名」といったものに、一体どうしてそこまで権利を主張できるのでしょうね?と問いたい。
そんなにその名前が他人に使われたくないのなら、自分の胸の内にひっそり仕舞い込んでおけば良かったのではないですか?と。
まぁそんな事を言っても、著作権といったものを与えられている権利保有者というものが当然のように大きな顔をしている現状では、全く響かない話かも知れませんけどね。
ウマ娘公式は、二次創作の内容について思う所があるとしても、そこは「お願い」で留めるべきだったと思います。
さらにはガイドラインなるものを設定しておいて、個別の問い合わせには答えないというのも不誠実でしょう。
ガイドラインの表記も曖昧なものが多く、その上で法的措置をチラつかせて、にも関わらず問い合わせには答えない・・・これって何ですか?
繰り返しになりますが、法的な措置をチラつかせたのは完全な悪手です。
この一文言があるだけで、一見無難な広報文が、無責任かつ高圧的な見当外れの駄文と化しています。
ウマ娘公式が馬主側や競馬ファン側の心象に気を使っているのは分かりますので、何らかの「お願い」を出すのは問題ないでしょう。
しかしそれは常に紳士協定であるべきで、法的な措置をチラつかせるようなものであってはいけません。
そうなって来ると、その法的措置を前提に考えた上で生じた脱法的な方向性を結果的には許容する事とならざるを得ません。
自分に銃口を向けている相手と紳士協定は結べないでしょう。