今回はアニメ『世話やきキツネの仙狐さん』の全話感想です。
自分はアニメ全般に詳しい訳ではないので、この作品がどの程度の知名度を誇るのかをいまいち把握できていないんですが、それなりには人気のある部類だったんじゃないでしょうか?
深夜の癒しとなっていた人も多かったであろう、この作品の感想を綴って行きたいと思います。
キャラクター
のじゃロリっ狐800歳
本作品のヒロイン?である仙狐さんは800歳で神使の狐という設定です。
声を担当するのは和氣あず未さん…あれ?なんか既視感があるなと思ったら、なるほど。
自分が大好きな『となりの吸血鬼さん』でエリー(画像左)を演じていた人でした。
つまりは、400歳オーバーの吸血鬼を演じた後に800歳の狐娘を演じているわけですか。
ロリBBAキャラに縁があるようで、是非ともそちらの方向で大成して頂きたい。
仙狐さんのキャラ付けは、幼女的ニュアンスを残しつつも母性的なキャラクター設定となっており、エリーとは大きく異なりますね。
セリフ回しとしては「うやん♪」という相槌に特徴を出そうとしていたようですが、もう少し使用場所を限定して会話の中におけるアクセントとしてのニュアンスを強めた方が、より「名言感」を出せただろうにとは思いました。実際の使われ方だと、少々印象がボヤけてしまっていた点は否めません。
中野くん
仙狐さんにお世話をして貰える幸せ者役は会社員の中野。
どうやらSEをやっているようで、たまに描かれる会社での様子を見ると、中々に過酷な労働環境のようです。
中野のようなキャラクターを見ていると、色々な事を考えてしまいます。
本作は仙狐さんに甘やかされるコンセプトを強く押し出した作品なので、流石にツッコミを入れるのは無粋だろうとは思いますが、中野のような「社畜キャラ」にはもう少し自主性を持って欲しい…なんてことも、頭の片隅にぽんやり浮かんでみたりはします。
ブラック企業が悪いんじゃない、ブラック企業で働いている奴が悪いんだ的な話もありますが、中野のように流されるままに過酷な労働環境を受け入れてしまう従業員ばかりだと、そりゃ会社側も上から来るよなぁという話ですからね。
しかし一方で、中野のような人が安心して暮らせる社会環境を作るべきだよなぁ…なんて事も思ったり、本作の趣旨とはズレた所で色々と考えさせられるキャラクターでした。
それにしても諏訪部さんは、大人の主人公格を演じさせると本当に万能すぎますね。
シロ様
仙狐さんと同じく神使の狐で何百年か生きている設定ではあるものの、キャラクターとしての色付けは大きく異なります。
仙狐さんが母性愛溢れるキャラクターであったのに対して、シロ様は幼女的奔放な愛らしさを有したキャラクターとして描かれており、中野にとっては父性を刺激される存在と言うべきでしょうか。
仙狐さんが中野に対して「存分に甘やかしてくれよう」と言っているのに対して、シロ様は「存分に甘やかされてあげる」と言っているあたりに二人の本作品における存在感の違いが表れていますね。
内田真礼さんの演技も素晴らしく、絵柄から感じるシロ様の愛らしさを更に増幅させてくれているあたりは流石です。真礼さんが元気っ娘を演じるとなんでこんなに可愛いんでしょうね?
お隣さん
名前は高円寺やすこ。
在学中の漫画家さんで、ペンネームは「ジャスコ」(こうえん「じやすこ」から取ったらしい)。
言ってしまえば、この作品にお隣さんという登場人物がいるとしたらこんなキャラかもなぁ…というのをそのまま形にしたようなキャラクターでしょう。
なんというかコメントに困るというか、良くも悪くも尖った所のないキャラクターでしたね。
夜空殿
本作における唯一と言って良いセクシー要員の夜空(そら)さん。
花魁のような恰好で喋る言葉は「はんなり」という、ベタと言えばベタなキャラ付けでした。
狐っ娘トリオの一人として見た場合、仙狐さんとシロ様、あと一人となると…こういったキャラになるだろうなと。
もう少し出番があれば個性を発揮できたかも知れませんが、逆に言えばあまり主張しすぎない方が良いキャラクターなのかも知れませんね。
三鷹
中野の同僚で、ちょいちょい中野にヘルプを頼みに来る役どころ…としか言いようが。
わざわざ取り上げているのは声優が福島潤さんだったから。
「このすば」のカズマ役でお馴染みの福島さんですが、自分が見る作品では中々お目(耳)に掛かれないので、声を聴いてひょっとして…と思いエンドロールを確認してやっぱり!ちょっと嬉しかった。
福島さんだからというわけではないですが、今作の構成で不満な点の一つとして会社の様子が描かれている部分が極めて少ない点があり、もっと三鷹や上司(千葉さん)との絡みを見たかったんですけどね。
ストーリー
やりたい事が優先されすぎた感
この作品を見ていて思ったのは、少々やりたい事が大枠のストーリーやエピソード作りよりも優先されすぎた感があるなという事。
本作品のやりたい事、つまりは深夜の癒しアニメというスタイルを提供する事ですが、兎にも角にもその要素で一点突破するようなノリだったのは純粋に勿体ないと感じてしまいました。
結果的に癒されるアニメで有る事は大いに結構ですし、自分自身もそのベクトルは大好きですが、それはあくまでも結果的にという話。
アツい夏にはかき氷!的なノリで氷を削ってシロップをかけたものを提供するのではなく、例えばフルーツに含まれるカリウムには体温を下げる効果があるので果物を使ったデザートを作ろうか…など、もう一工夫あれば尚良かった。
公式側の発言でも、兎にも角にも癒し癒し、癒しのゴリ押し気味だった点は少々気になる所で、棘のある言い方をするなら「癒し以外には何もないのか?」といった感情も少々浮かんできたりなんだり。
そりゃ動画工房のノウハウと実力ある声優陣の演技、そして魅力的な原作があれば「これぐらいはできる」でしょうが、これ以上のものにも出来たと思うと、勿体ないといった思いを禁じ得ないのです。
会社の描写が雑
仙狐さんに癒される家での時間を絶対正義とするために、会社の描写がかなり雑な「悪役」にされており、もう少し会社側の描写にも厚みが欲しかったのが正直な所。
いやもちろん、本作のコンセプトを考えればこういった単純な色分け、描き方もアリと言えばアリなんでしょうが、ここまで雑な描き分けだと、中野に同情するよりも「それでいいのか中野君?」といった感情の方が強く湧いてきたりなんだり。
せめて一話分ぐらいは会社比率高めの「会社回」を用意するべきだったと思います。
総評
満足度:★★★★☆
3つにしようか迷いましたが、多少甘やかし気味に4つという事で。
日常系アニメ好きな自分としては、本作のような作風は歓迎できますし、それなりに楽しめもしました。
しかし、もう少し工夫を入れて欲しい、そうしないと見ている人の多くが「癒された」としか言わない状況が成立してしまい、それ以外の感想が聞かれないような事にもなってしまいかねない。
例えば本作は、中野と同じような境遇の人にとっては、そうでない人と比べて違った色彩で彩られた世界観だったのかも知れませんし、仙狐さんのように誰かを甘やかす事に喜びを見出す感情に共感した人も少なからず居る事でしょう。
しかし、そういった具体的なリンクを自分自身に引けない人にとっても魅力的な作品として映るように、もう少しだけ工夫をする事を作り手には真剣に考えて欲しいと切実に感じています。
なまじ魅力的な枠組みが存在しているから、それだけでどうにかなってしまう気がして工夫が育たないのでしょうが、そこを何とかこじ開けてもう一歩進めて欲しい。
もし二期があるのなら、そんな形に進化した仙狐さんを見せて下さいね?
©2019 リムコロ/KADOKAWA/世話やきキツネの仙狐さん製作委員会