『まちカドまぞく』(全12話)の感想【アニメ全話レビュー】

まちカドまぞくキービジュアル

©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

現時点で2019年最も好きな作品である「まちカドまぞく」を無事に全話見終わったので感想を書いて行こうと思います。

最近は何だかんだで毎クールに近いぐらい一定以上には楽しめる作品があるので嬉しい限りですが、その中でも当作品は頭いくつか抜けて好きな作品。

これぐらい好きな作品が毎クール1作はあってくれると日々に潤いが出て良いのですが…dアニメストアだけではなく他の配信にもアンテナを張るべきかも知れませんね。

吉田優子(シャドウミストレス優子)の絶妙な塩梅

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シャミ子はとにかく演技のニュアンスが絶妙に良いんですよ。

円盤のブックレットでも語られていましたが、オーディションで演じたものと実際のシャミ子には大きな違いがあったようで、その痕跡を一話では感じる事が出来ます。

「可愛くなり過ぎないように」というようなディレクションがあったようですが、その結果としてより一層(広い意味で)可愛らしい、言い換えれば「萌える」キャラクターになっているように感じました。

「スイカに塩」といった具合の趣を感じます。

最近思うのは、「可愛い」と「萌える」の使い分けとして妥当なのは、まさにこう言った事なのかなと。

シャミ子の愛らしさは、「可愛い」というよりも、もっとグッと来る感じ…この感触こそが「萌える」というものだったんじゃないかと、そんな事を思い起こしていたりもしました。

千代田桃(フレッシュピーチ)のアイデンティティー

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身長差や性格あるいは声のトーンなどなど、シャミ子との対比が映えるキャラクターとして作られた事を強く感じる桃ですが、それ以外にも魅力的な面が垣間見えるのが良いですね。

桃は地元のゆるキャラ「たまさくらちゃん」を熱心に応援していますが、これには桃の生い立ちから来るアイデンティティーが強く関わっているように感じます。

作中で語られるように桃は孤児であり、姉の千代田桜に引き取られて?(この辺の経緯は不明ですが)「千代田桃」となったようです。

多魔市は千代田桜によって庇護された特別な街である事が最終話でも語られていましたが、そんな街に対して桃は「この街だけは守りたい」と特別な思いを抱いています。

孤児である桃にとっては、姉の桜はもちろん、その桜が守り続けている多魔市自体が自分自身にとって心の拠り所となっている事は想像に難くありません。

たまさくらちゃんを桃が愛でる理由には、一般的な郷土愛というもの以上の「多魔愛」が大前提として存在しているのではないでしょうか。

リリス(ごせん像)の万能っぷり

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まずは夢の中に出て来るリリスについて。

感情表現の幅が広いキャラクターで、ぐいぐい強引に事を進めようとするかと思えば、思いのほか打たれ弱いというか、すぐ自虐的になるあたりが見ていてとても楽しい。

この辺の性質は恐らく、光の一族に負け続けた事による自信喪失っぷりが表れているのだろうなと推測してます。

そして途中から喋る事ができるようになった始祖像スタイルについては、もう可愛すぎる!

喋る事ができるようになってからは普通にシャミ子や桃さらにはミカンとの掛け合いがあるので、良いキャラだなぁと改めて実感した思いです。

夢の中では心折系悪魔キャラ、実体としては可愛いマスコットキャラだなんて、立ち位置的に美味しすぎる。

陽夏木ミカンの声に納得

まちカドまぞく陽夏木ミカン

公式のインタビュー記事でも書かれていましたが、ミカンの声はたしかに新鮮な響きがありました。

時々妙に色っぽい艶を見せるミカンちゃんなんですが、そうはいっても高校生なので、そのギャップが最大の魅力ですね。

終盤の話数でシャミ子がミカンに必殺技を見せて欲しいと詰め寄った時に言った「ハラスメントッ!」というセリフには、ちょっとキュンとしてしまった(照)。

本作の主要キャラを「シャミ子、桃、リリス、ミカン」とするのであれば、ミカンの声はまさにこの4人で奏でるハーモニーの中で調和を取りつつ明確な存在感を示す意味で「合点のいく」演技だと強く感じました。

特にミカンは中盤以降で登場するキャラクターですから、ある程度以上のインパクトがないと他のキャラクターの陰に隠れてしまうので、そういった意味でも非常に良いキャスティングだったと感じます。

杏里ちゃん&小倉さん

まちカドまぞく杏里と小倉

最初はシャミ子の学友という立ち位置がメインなのかと思っていたんですが、それぞれ作品を構成する上で重要な部分を担っているキャラクターでした。

杏里ちゃんは光の一族vs闇の一族的な文脈には絡んできていないものの、桃への情報提供やらシャミ子へのバイト紹介やら、ストーリーを進める上でポイントとなる部分を担う事が多いキャラクターでしたね。

杏里ちゃんの軽さが本作におけるテンポ感の良いアクセントになっていたように思いますし、割と必要不可欠な存在だったんじゃないかと全話見た上で改めて感じます。

小倉さんは終盤で活躍(?)する回があり、なるほどこーゆー子かぁ…という事を強烈に再認識させられました。

にしても小倉さんはシャミ子的な認識では「杏里ちゃんの友達でC組の小倉さん」という事で、友達じゃないんですよね。

でも自分、気付いちゃったんですが、杏里ちゃんも小倉さんの事を「小倉さん」って呼んでるんですよ…ちょっと距離があると思いませんか?

これひょっとして、小倉さんって杏里ちゃんの友達ですらなかった可能性もあるんじゃないかと思うんです。

…いやーほんとに小倉さんは素敵なキャラクターだなーっと。

お母さん&良子

まちカドまぞく吉田家

学校でのシャミ子も良いですが、吉田家の団らんは見ていてホッコリしますよね。

本作のアニメがこれほど温かい雰囲気に包まれているのは、吉田家の様子を比較的多く描いてくれたからではないでしょうか。

にしても、お母さんは良いキャラクターですねぇ。

正直、本作のメインヒロインはお母さんなんじゃないかと思うほどです。

「新しい冷蔵庫の舞い」はもちろん、ポイントでお皿をもらうくだりも最高に可愛かったなぁ…。

しっかりしているようでどこか抜けた一面が垣間見えるあたりに、シャミ子のお母さん感が出ていて良いですよね。

良子は良子で、これまた愛しい妹ですよ。

5話の冒頭でシャミ子を取材したいと言い出した時にシャミ子が「私なんて急に闇の力が覚醒したへっぽこ高校生だから…」といったような発言に対する良子の返答が、この姉妹を象徴していると思います。

「そんな事大丈夫、わたし良い感じに脚色するの得意だから」

「そんなことないよ」とは言わないのです。

シャミ子は良子が姉をカッコよく戦う魔族だと認識していると思っているようですが、実際にはそんなことは全くないんですよね。

良子はただ、「わたしのお姉ちゃん」を応援したいだけなのです。

本当に、シャミ子が言うように良子は姉想いの良い妹ですよ。

洗練された温度感

まちカドまぞくお父さんボックス

これは本作に限った話ではなく、昨今の日常アニメ全般に言えることですが、作品内で流れる空気や世界観が非常に洗練されているのです。

言い換えれば、振り切ったギャグやシリアスといった分かりやすい表現ではなく、様々な要素を適切かつ印象的に配置した、そんな居心地の良さを感じる作品が最近は本当に増えたなと感じます。

本作で言えば終盤は比較的シリアスな展開とも言えますが、それによって作品の印象がザラザラしたものにならないように明確に意識した演出を施されており、「あざといシリアス」ではない事で自然と視聴者が受け入れられる温度感で表現されているのが素晴らしい。

こういった洗練された世界観に慣れてしまうと、分かりやすくシリアス風味な作品がどうしても「粗削り」に見えてしまう事を最近は実感しています。

男性ボイスの存在感

まちカドまぞくがんばれ優子

最近のアニメで、特に女の子がメインの作品において「ちょっとだけ男性ボイスを混ぜ込む」事がノウハウとして確立されて来たのは嬉しい限り。

比率的には男女比で1:9ぐらいが黄金比だと思っています(2:8ぐらいでも面白いですね)。

もちろん作品によって色々な表現があって良いと思いますが、女の子メインの作品に男性ボイスを混ぜ込み過ぎると少々クドイ、かといって全くないとフワフワした印象になってしまう…そんな中でちょっとだけ男性ボイスを混ぜ込む事で圧倒的に作品の輪郭がはっきりとしてくるんですよね。

同期の作品で言えば「ソウナンですか?」あたりも正にこのタイプでした。

きらら作品で言えば「ゆるキャン△」の印象が強い人も多いんじゃないでしょうか(どちらも大塚明夫さんですね)。

たまに男女の構成比率が偏ったアニメを「不自然」と言う人がいますが、自分に言わせたら男女比がほぼ均等という方がよっぽど不自然(人為的)だと感じるんですけども。

ごくごく普通の人の場合、友人の男女比が1:1である人ってそんなに居ないでしょ?普通はどちらかに偏っているものじゃないんですかね?

そういった理由もあって自分は男女比が1:1になるよう仕組まれた感じのするアニメが比較的苦手なんですが(青春恋愛群像劇的なものが苦手というのも大きい)、この男女比1:9は日常アニメを描く上で非常に良い塩梅なのです。

ナレーション(お父さん)や犬、宅配の人やニセごせん像(ただのペットボトル)にフクロウなど、様々な部分で男性ボイスが良い仕事をしてくれていました。

最後の締めも良かったですよね。

「がんばれ優子。誰よりも優しく、強くなるんだ」

ギリギリいっぱいのテンポ感

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本作は声優さんも苦労するレベルでハイテンポでセリフをぶつけ合うような側面も持ち合わせています。

実際アニメを見ていても早いなーと感じる部分もありましたが、本当にギリギリのラインで「テンポが良い」と言っていられるラインを堅持してくれていたように感じます。

たしか6話だったかな?自分はアニメを切欠に原作を読み始めたのですが、これぐらいのタイミングだと原作がアニメを追い抜いていて、内容を知った状態で見ていたんです。

そうなると、原作を読んだときに感じた自分なりのテンポ感と実際のアニメで表現されているテンポの差が生じて違和感が出たりもするわけでして。

6話はそういった意味ではちょっと駆け足だなぁと初見では感じたんですよ(特にここは重要なエピソードだったので、割とサクサク進むなといった印象が強かったんでしょう)。

でもこれが二度三度と見て行くと、このテンポでスッと入って来るようになっているんです。

とは言え、正直6話は結構ギリギリだったとは思いますけども。

それ以外の話数は確りと面白さを感じられるラインを守った上でのハイテンポといった感じで、このあたりに監督の力量が出ているのだろうと感じました。

原作のエピソードを詰め込むだけ詰め込む事を考えて作られたアニメは忙しなくて残念に思う事が多いんですが、限度をわきまえた監督が指揮を執る作品であれば、こういったスタイルもアリだなと思えたのは本作における大きな発見の一つです。

効果音の面白さ

まちカドまぞくよいやさー

本作の特異性として分かりやすいものに、効果音(SE)で随分遊んでいるなといった感想があります。

1話の時は特にそれが顕著に表れていて、色々と工夫してくれているのだなと見ている側としても嬉しくなりました。

あと個人的に気になったのが、ごせん像のテーマSE?とでも言えばいいのか、なんかよく分からないけど「ぐるるるるる」ってな感じの音がごせん像メインタイミングで流れていたりするんですが、アレは何なんでしょうね?

何かよくわからないけど妙にシックリくるので、あの音は一体何なんだろうと不思議な心地良さを感じていました。

遊びのあるアニメ表現

まちカドまぞく尻尾

しっぽが縦横無尽に動きまわっていたり、SEボイスが文字として可視化されていたり、色々と遊びを入れてくれているのはやっぱり嬉しい所です。

こういった表現が似合う作品とそうでもない作品があると思いますが、まちカドまぞくのように似合う作品は色々と遊んで欲しいですよね。

近年は全体的に綺麗な作品が増えた事で、ことさら低予算のものが「ボロく」見えてしまいやすい状況でもあると思うんですが、整った絵ではなくても工夫次第で面白く見せる事は可能だと思うので、ガッチリとリソースをかけてゴリ押しできる作品以外のものこそ、ちょっとした工夫を見せる事が重要になっているようにも思います。

『まちカドまぞく』感想まとめ

満足度:★★★★★

なんと、出ました★5つ!

恐らくは『となりの吸血鬼さん』以来でしょうか。

逆に言えば間が一年と開かずに★5を付けれるんですから、ここ数年は本当に自分好みの作品が定期的に出てきてくれていて嬉しい限りです。

自分は日常系アニメが好きなわけですが、最近は本当に洗練された作品が多くて、喜ばしいのと同時にホッとしています。

数年前に比べて日常系アニメというものにスポットが当たる事が少なくなって来たように思うので、間違いなくアニメの未来に繋がっている作風が一時であっても廃れてしまえば、三歩進んで五歩下がる状態が訪れるのかも…とも感じていたので、芸術性だけではなく娯楽性も良い塩梅に備えた作品が定期的に出て来てくれているのは何より。

日常アニメの魅力の一つとして、その驚異的な再視聴性があるのですが、本作も本当に何回でも見たくなる魅力にあふれています。

とは言えあまりにも繰り返し短いスパンで見過ぎると飽きるので、面白いが故に気を付けないといけない所だったりもしますが。

どうやら円盤の1巻は上々な売れ行きのようですから、是非とも2期を製作して欲しい。

そしたら原作の方ではすでにお馴染みの二人組(人で良いかはアレですが)も登場しますから、同じ製作陣が手掛けてくれるのであれば面白いアニメに仕上がる気しかしないのですが。

何にしても、個人的には「何はなくとも何回でも見たくなるアニメ」ライブラリーに新たな傑作を追加できて非常に満足です。

愛しいアニメをありがとうございました。

原作漫画はこちら


©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

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