IVE電波ソングの本質と根本的な勘違い【I’veデンパ曲/KOTOKO/しょーとサーキットDS】

しょーとサーキットDS

IVEファンやKOTOKOファン以外における(主に二次元界隈での)KOTOKO曲の知名度を考えると、圧倒的にあの曲が有名ですよね。

そう、「さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~」です。

公式系のオリジナル版動画が無かったのでカバー版ではありますが、この曲です。

何ならIVE系楽曲の中でも「鳥の詩」の次ぐらいに有名な曲かも知れません。

この楽曲の知名度から、「KOTOKO=電波ソングの大家」といった認識を持っている人は、IVEファンが思っている以上に多いのかも知れません。

今回は、IVEの電波ソングについて、その本質にあるものについて、そしてある種の勘違いについて、ついでにしょーとサーキットDSについても語ってみたいと思います。

電波ソングとは?

電波ソングの定義は非常に曖昧ですが、ウィキペディアには以下のように記述されています。

電波ソング(でんぱソング、電波歌、電波曲)は、「過度に誇張された声色」、「意味不明、支離滅裂だが印象的な歌詞」、「一般常識からの乖離」、「奇異ではあるが耳に残る効果音や合いの手、掛け声」、「一度聞いたらなかなか頭から離れない」などを特徴に持つ音楽を指す。滑稽で笑える歌とされることも多い。

https://ja.wikipedia.org/wiki/萌えソング#電波ソング

ここで語られている定義は、個人的な電波ソングの認識と基本的に一致します。

この記事内でも語られているように、電波ソングというものは萌えソングというものと同一、あるいは近しいものとして認識されている部分がありますよね。

その境界線は曖昧で、聞き手によって認識が変わるというのはその通りだろうと思いますが、そもそも区別される事自体がほぼないんじゃないかと。

自分としては、電波ソングにおいて最も重要な所は「変な曲」であるという事だと認識しています。

「電波ソング」という名称は、荒唐無稽な妄想や主張を公言する者を俗に電波系と呼ぶことに由来する。しかし、前述のような特徴を一部備える替え歌や前衛芸術的な曲は通常電波ソングとしては言及されない。

電波ソングというのは正に「電波系」といった概念からの派生ですから、要するに「普通じゃない」「一般的ではない」といった事が定義として最も重要な点でしょう。

そう考えてみた場合、そもそもの電波ソングといった名称に込められたニュアンスから言えば、むしろ「前述のような特徴を一部備える替え歌や前衛芸術的な曲」も含めての電波ソングだと思うんです。

つまり、現状一般的に認識されている電波ソングという枠組みは、当初想定された「電波ソング」という枠組みよりも非常に狭いものとして認識されてしまっているのだろうと思うわけです。

こういった現状が電波ソングという枠組みに愛着と可能性を感じる自分としては非常に残念であり、それによって電波ソングという文化がすっかり寂れてしまったとも思っています。

自分が想定する電波ソングの定義を一言で表現するなら、「既存の美徳とは違った方向性を示す楽曲」といった感じでしょうか。

IVEデンパの正体

IVEの電波ソング(以下、IVEデンパ)というものは、基本的には「萌えソング」といったような定義がシックリくるような楽曲となっています。

これはなぜかと言えば、要するにIVEデンパとは「KOTOKO流電波ソング」の事だからです。

IVEデンパの元祖と言えば、「恋愛CHU!」ですが、この楽曲は依頼主側から「プッチモニみたいな曲で」というオファーで作られたのだったと記憶しています。

若い年代の方だと分からないかも知れませんが、モーニング娘の内部ユニット?(自分も詳しくないのでうろ覚えですが…)で、変な曲(まさに電波ソング的な)を色々と歌っていた覚えがあります。

具体的な参考曲は忘れましたが、ともかくそういった「変な曲を作ってくれ!」といった依頼に対して、高瀬さんが匙を投げ(笑)、中沢さんがなんとか仕上げたのが「恋愛CHU!」だったと記憶しています。

ここで作詞を行ったのがKOTOKOさんであり、歌詞の内容としてはプッチモニのソレとは違い(たしか違いましたよね?)、甘ったるい恋愛曲といった方向性になりました。

「THE BIBLE」の発売に合わせたKOTOKOさんへのインタビュー記事中で、「Pure Heart ~世界で一番アナタが好き~」の作詞について以下のように語られていました。

――最初に「Pure Heart ~世界で一番アナタが好き~」で作詞したときの感想も教えていただけますか?

KOTOKO 「こんなんでいいのかな」って(笑)。「Pure Heart~」はアンドロイドの女の子が人間の男の子に恋をする、恋を知らないピュアな女の子が恋を覚えていくという話だったので、男性作家には書けない世界観だと思ったんでしょうね。だから私に作詞を振ったんだと思います。私としては自分にできることをやるしかないので、乙女の日記みたいな“ど”直球の甘々な歌詞を書いたんですが、ゲームの主題歌となるプロの作品としてOKなのかわからなくて。恐る恐る出したんですが、ほぼほぼ採用していただきました。そこから、高瀬さんの楽曲は全部私が詞を書くことになりましたね。「曲を書くより詞を書くほうがきつくて、すごく時間がかかるんだよ。KOTOKOちゃん書いてよ」って感じで(笑)。でも私は歌詞を書くことが大好きだったから、楽しくて楽しくてしょうがなかったですね。

https://akiba-souken.com/article/44933/

作詞に注目するなら「Pure Heart ~世界で一番アナタが好き~」こそがIVEデンパの初代と言うべきなのかも知れません。

他にも「アレながおじさん」なんかもありますが、あれは偶発的かつ散発的なものだったので、IVEデンパの初代と考えるには後の楽曲に対して系譜が繋がって無さ過ぎますねw

ともかく、IVEの電波ソングというものは「プッチモニをヒントにKOTOKO流の甘々な世界観が展開される楽曲として定義・認識されていった楽曲群」であると言えるでしょう。

しょーとサーキットDSが電波ソングであり続けられなかった理由

ここで思い出されるのが「しょーとサーキットDS」です。

しょーとサーキットDS

所属歌姫の柚子乃とRINAによる電波ソングユニットとして誕生したんですが、CDの発表が続くにしたがって「電波ソング…か?」といった状況となり、最後となった「しょーとサーキットDS3 -FINAL CORNER-」では最早一枚目のCDで見せたIVEデンパ感の面影もなくなったという、ある意味非常に興味深い企画でした(笑)

と言っても、楽曲自体にネガティブな印象があるわけではありません。

むしろ後半へ行くにしたがって好みの楽曲が増えていったような印象があり、個人的には好ましい変化でした。

しかしやはり「IVEデンパ」といった所を考えるのであれば、初期コンセプトが破砕したと言わざるを得ないでしょう。

なぜこうなってしまったのかですが、これは簡単な話です。

先ほども語ったように、「IVEデンパ=KOTOKO流電波ソング」なんです。

ですから当然、KOTOKOさん不在の状態では(旧来的な意味での)IVEデンパは拠り所を失って迷走せざるを得ないんです…必然です。

逆に言えば、1stCDでの「応援 is L♥VE!!」なんかはKOTOKO作詞だけあって、非常にIVEデンパっぽい雰囲気に仕上がっていますよね。

IVEデンパを外観的に解釈すると、「甘々で可愛い恋愛曲」といった事になりがちですから、他の人がそれに準じたものを作ろうとすると、やはりそういった性質のものになります。

しかしKOTOKOさんは流石にIVEデンパの根源だけあって、そこから更に重要な点をしっかりと認識なさっているように思います。

それは、「くどい」事。

「くどく甘々」で「くどく可愛い」くて「くどい恋愛曲」といったニュアンスがIVEデンパ=KOTOKOデンパにおいて重要な匙加減だと思うんですよね。

ただその「くどさ」も限界まで高めれば良いという訳でもなく、やはりそこには「良い塩梅」というものがあるわけです。

その「くどさ」の匙加減こそがIVEデンパの重要な点であり、その匙加減が分かっていないと単なる「可愛い曲」「甘々な恋愛曲」「くど過ぎる曲」といった事になってしまいます。

「しょーとサーキットDS」がIVEデンパとして瓦解してしまったのは、作り手がそもそも「電波ソングとは?」といった軸をしっかりと持っていなかった事、IVEデンパは「KOTOKO流電波ソング」という事を理解していなかった事が原因だったと言うべきでしょう。

電波ソングの再興を願う

率直に言えば、自分はIVEデンパ的な「甘ったるい恋愛曲」は好みません。

しかしそういった曲も内包する電波ソングというカテゴリーには強い魅力を感じますし、これからも存在して欲しいと思っています。

そのためにはまず、電波ソングの定義を語源的なニュアンスにまで拡大する必要があるでしょう。

IVE楽曲で言えば、「恋愛CHU!」も「さよならを教えて」もどっちも電波ソング!というような認識が一般化して欲しいと願っています。

IVEデンパもそうですが、現状における「いわゆる電波ソング」というものは、それこそ「萌えソング」であったり、IVEのNAMIさんが言うような「キュンキュン系」といった表現の方が適切だろうと思います。

電波ソングという大枠の中に、そういったキュンキュン系もあれば旧来的な電波系といったものも含まれる、そういった「普通じゃない色々」といったような雑多かつ懐の深い音楽ジャンルとして電波ソングというものが再定義され、再び活気ある状況が生まれる事を願っています。


©fuctory RECORDS.

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